冬のコミックマーケットに行って感化されたこともあって、今まで観たアニメについて個人的な記録としても何か文章で残しておきたいという気持ちになりました。
そこで今回は、ちょっと遅いですが「去年のアニメについて大雑把なレビューをしながら6段階で勝手な"評価"をつけていく」企画をします。対象は去年初回から最終話まで全話観たアニメ全タイトルです。"評価"はだいたい以下のような基準、というか気分でつけています。
S あぁ^~オタクになる~
A 秀作、人に勧められる
B 凡作、十分楽しめた
C 佳作、平均的
D 駄作、見るべきではなかった
E 許せねえ・・・
そんな読む人もいないと思うけど一応の注意としては、割とはっきり書くことは書くので、気に入らない意見もあるかもしれないけどそれはそれで一意見として認める、というスタンスで読んでほしいですね。こうする以上こちらも批判などいただくことがあれば尊重して真摯に向き合うつもりです。
書いてたら思いのほか長くなったのでpart1、part2に分割します。
2017年
冬季(1~3月)
・『ACCA 13区監察課』:A
架空の国家で働く官僚たちのお話。ビジュアル的な派手さはほぼなくて、なんというか非常に大人しい雰囲気を纏った稀有な作品。監察官である主人公が各地を視察するなかで国が抱える歪みだとか、各人物がどんな思いを抱いているのかが少しずつ明かされるんだけど、それらは基本的にいつも「社会」のフィルターに隠されていて、でもふとした時に何となく見えてくる瞬間があったりする。そんな奥ゆかしさが凄くリアルだしカッコいい。ナレーションも「説明役」のキャラクターもいないけど、タバコの銘柄とか好きなお菓子とか、そんな日常の些末な話題のなかに本筋のテーマを垣間見ることがあったり、台詞のない「間」の中に強い思いが感じ取れたりするのがおしゃれ。行間を読んでいく楽しさがあり、あとは設定の「国」を現実の社会構造と照らし合わせて見ると面白いですね。
かなり小説っぽいお話であり、バトルシーンなんかがあるわけでもないのでこれアニメにする意味あるの?とは思ってました。疲れてるときに見ると眠くなる。
・『この素晴らしい世界に祝福を!2』:B
いわゆる「異世界もの」でギャグをやるというメタ的な作品だけれども、1期から安定して面白い。思いっきり崩した作画とか、随所にこだわりが感じられるのも良くて、ギャグとしてかなり成功していると思います。毎週楽しく観られました。ただ私としては特別思い入れのある話数もキャラクターも無かったのでこんな感じ。
・『Rewrite』:B
全話観たはずだけど、あまりに多くの疑問が投げ出されたままで全く終わったという感じしかない。2クールでも全然尺が足りなかったんでしょう。しかし難解極まる世界観には相当惹きつけられるものがあって、時間がある時にいつか原作をプレイしたいという思いはかなり湧いてきました。オカ研での平穏なラブコメ的な日常が、いつのまにか地球の存亡をかけた争いとオーバーラップしてしまい人が死にまくるという展開はとてもクールでいいですね。そしてそれがkey作品らしいADVへのメタと現実社会へのメッセージ性を伴ってやってくるのも見どころです。あと私はこういう一周遅れにも思える「昔のギャルゲー」然としたヒロイン像が案外好きなのかもしれない。
・『政宗くんのリベンジ』:D
反生殖主義者の主人公が女の子を落とす痛快復讐劇が見たくて見始めたはずなのですが、中盤でヒロインがもう一人出てきたあたりから普通のラブコメになってしまい、がっかりしました(?)。そうやって露骨に商業主義に走るから苦手なんだよな。
・『リトルウィッチアカデミア』:A
表現としての第一義的なアニメーションの面白さというのは、あまりベストな表現じゃないけど「発想力」と「動き」だと思うんですよね。表現できるモチーフの幅広さと自由にそれを動かせる面白さ。本作はそうした最近の深夜アニメでは一種のテンプレートや過剰な雰囲気作りに隠れて軽視されがちな、本来的な楽しさをアニメーターが自由に、のびのびと追求していることが感じられて好感が持てます。これがやっぱトリガーなんだよな。だからキャラクター各々の個性を生き生きと描けているし、合間の「日常回」みたいな話数の出来もすごくいい。
メインテーマのことをいうと、「魔法」が利己的に利用される人間の道具としてではなく、純真さやひたむきさ、そして誰にとっても開かれた「夢」「可能性」の象徴として描かれているのがポイントですね。ただしそこに至るまでにはアッコの猪突猛進ぶりだけではダメで、ダイアナやアーシュラ先生が挫折し葛藤する負の側面も描かれています。だからこそ自然と共感し易い物語になるのだと思います。スーシィの脳内を冒険する8話大好き。
・『CHAOS;CHILD』:C
序盤のSFホラーめいた雰囲気作りが丁寧で最初はかなり評価していたのですが、中盤以降あまりにも簡単に、何の感動もなく人が死んでゆくので全然感情移入できなくなりました。間をとってこんなもん。『Rewrite』と同じくADV原作ですがこれもキャラクターはなぜか好き。
・『ハンドシェイカー』:D
なんでこれ最後まで観たんだっけ…ってなってる。粗削りだけど3Dを使ったバトルシーンが表現としてなかなか斬新で見所だったんですが、話のほうはひたすら浅え…という感じで、テーマを語るためのこだわりとか必然性みたいなものが足りなかったと思います。りり会長がエロかった。
春期(4月~6月)
・『進撃の巨人season2』:S
一期は本当に大好きで、続きはアニメで観たいと思って原作にも手を出さずにいたけれどもようやく二期が見られて嬉しかったですね。こんだけ人がガンガン死ぬのに飽和しないで毎回ヒリヒリした恐怖感と食われる痛々しさが伝わってくるのすごくない?大迫力・超絶作画の立体起動シーンも健在でした。
一期は理不尽な恐怖とそれに立ち向かう勇気というのが大きなテーマでしたが、二期では巨人という存在に隠された謎を解いていくという部分がクローズアップされてきました。EDの意味深なカットなんかも気になるし、「リヴァイ班が初回戦闘で全滅とかありえんだろ…」みたいな安易な予定調和をどんどん裏切ってくる作品だから油断ができなくて毎週続きが待ち遠しい。ライナーとベルトルトが巨人になるシーンは演出も相まって衝撃でしたね。
壁というのは文明の象徴で、それが巨人に破壊されることで人間の社会も終わる。けれどもその構造には隠されてきた歴史の嘘みたいなものがあるらしいことが分かってきた。現代特有の社会や政治への漠然とした不信感にもつながる部分があり、ウォール教や憲兵団の話とか、現実へのメッセージ性を多分に持った作品で、その辺りもウケた理由なのかなと思っています。エレンやミカサ、アルミンは本来社会の代表者ではない、弱い立場の人間だったはずなのに、社会の守り手として期待される立場になってしまう。これまでは復讐心に任せて突っ走ってきたけど、いつかはその矛盾に気付かされるんじゃないか。で、それは最終話のライナーの「お前は一番その力を持っちゃいけない人間だ」という台詞と関係してくるんじゃないかと勝手に想像しているけれども、原作勢のみなさんどうなんでしょう。
・『終末なにしてますか?忙しいですか?救ってもらっていいですか?』:B
冒頭ヒロインが死ぬシーンから始まって最後きっちり死んで終わる構成はいかにもラノベっぽいタイトルに似合わず気骨が感じられてよかった。ほかの妖精たちのまとめ役として、しとやかで献身的に振る舞うクトリが主人公と出会って少しずつ変わっていく。嫉妬したり、不安な気持ちを吐露したりするようになって彼女は使われるだけの存在から人格を持った女性に近づいていくわけだけども、主人公に認められるだけの「自分」を意識すればするほど、自分が仮初めの存在であることを突きつけられてしまう。それでも苦しみながら強く生きようとするクトリの姿は儚げで感動的でした。「獣」の謎の説明はほとんど投げられていますが、命数短い彼女が見ていた世界の狭さを思うとこれはこれでありだと思います。
で、気に入らないのは主人公のヴィレムの人格がはっきり描かれてないことなんですよね。何故彼がクトリを大切に思うのか、何を思って戦っていたのかいまいちピンとこないから、ただ気障ったらしいだけの男にも感じてしまう。まあそんな抜け殻のような彼にとってもクトリたちとの出会いが存在意義を与えてくれていた、みたいな話をしたいのだったらそれでもいいかなとも思うので、好みの問題かもしれない。
・『ID-0』:B
監督谷口悟朗、脚本黒田洋介なので見てました。スクライド大好き。全体的に「一昔前のアニメ」感があって懐かしくなってしまった。掘削船メンバー各々にあるべき描写がきちんとあって、キャラクターを丁寧に描いているところはさすがという感じ。肉体を失い、記憶を失っても自分は自分自身たり得るのか…というのがテーマですが、欠けた部分を補いあい、仲間とお互いを認めながら自己のあり方を探していくなかでのメンバー間のサバサバしたやり取りが格好良かった。SFとしても最後できっちり謎を回収したという印象でした。ただやはり全体的に地味さは拭えなくて、SFっぽく没入してしまうような世界観の魅力というのは無かったなという感じです。
・『Re:CREATORS』:A
アニメとか漫画とかいったオタクコンテンツにも割と多様性があり、その各ジャンルの持つ独特の雰囲気とか一種のお約束みたいなものがあるわけだけども、それらが物語の構成要素として本当に上手く取り入れられてすごいと思いました。本作では各ジャンルがオーバーラップしながら、スマブラみたいに「ラノベヒロインvs魔法少女」のようなマッチアップが実現して迫力あるバトルシーンが見られたことは、いちアニメファンとして純粋に楽しかったですね。それで作品ごとの世界観のギャップやキャラクターごとの価値観のギャップ、あるいは創作世界と現実世界との違いというのがどんどん浮き彫りになっていくのはかなり面白かったです。
後半になると創作論の話がメインになってきて、こちらも熱量があって共感できました。物語において作者と創作のキャラクターとでは作者のほうに主があるように考えがちだけれども、しかし作者の側も創作のキャラクターのひたむきさに心打たれるからこそ作品を書き、キャラクターの生き様を描写するのに真剣になる。
以下気に入らない点を述べますが、第一に創作論の話は制作を担った人々にとってもクリティカルな問いだと想像されるので、やや説教くさく感じられること。第二にメテオラが文語的な言い回しを多用して説明をするシーンがあまりにも多く、内容を理解しようとするとかなり流れが途切れてしまうこと。特に二点目が深刻で、水瀬いのりさんの実力不足もあると思います(?)。
・『冴えない彼女の育てかた♭』:B
このクールは『Re:CREATORS』とこの作品が創作論で見事にコンボを決めていて美しかった。タイトル通り、ヒロイン勢をいかに可愛く描くかという点において非常なこだわりを感じられるのはいいですね。えりりと詩羽先輩にとって、クリエイターとして唯一無二の作品を作ることと、倫理君に認めてもらうことは、自分の存在意義を確保するという意味合いにおいて全く同じ方向性なわけです。倫理君が優しさからえりりを休ませようとしたことが、クリエイターとしてのえりりのプライドを傷つける結果になるくだりは満点!という感じでした。そういう微妙な距離感が好き。
ラブコメが基本的に嫌いという話をしましたが、この作品の「ラブコメ的テンプレ」はオタク的視点をもつ主人公たちによって相対化されていて、その中で彼ら独自の関係性を目指すとか、感じた一瞬のときめきを具現化することでテンプレを越えようとしているのは作品としての強度を感じます。ただこの作品をそこまで好きになれないのは主人公の倫理君が好きじゃない、その一点につきます。何故かは、まあ、あんまり言いたくないので察してください。
・『ベルセルク』:C
名作として広く知られた漫画が原作です。原作は未読でしたが、面白いかどうかで言うなら話としては断然面白かったですね。ただアニメ作品として見たときに、多用されている割にいまいち世界観に合ってない気がする3DCGとか、唐突に仕込んでくるギャグシーンとかが原作の良さを殺してる感じがしてしまってあまり入れ込めませんでした。もっと丁寧に作ってくれれば…という勿体なさが目立った印象です。
こういう美少女がハーレム的にたくさんいてバトルするみたいな作品、いくらでもあるしあまり私は見ないんだけど、これはかなりハマってしまい原作の漫画まで揃えました。まずこの作品のギャグセンスがめちゃくちゃ好き。チョロすぎるヒロインとか、女の子に相撲をとらせるとか、設定が無茶苦茶で「わかってる」タイプの笑いがあるのがいい。バトルも真面目にするし「古武道」を全面に押し出してるけど、肝心のバトルシーンがお粗末で、それも狙ってるんじゃないかと思えて笑えます。
特筆すべきは、この手の作品には本当に珍しいほどに主人公が気障でなくカッコ良くてさっぱりした、「大人」なキャラクターだということです。結局そこがかなり上手く効いていて、メタ的なギャグパートとシリアスなバトルシーンを接続して絶妙なバランスが形作られていますね。鬼瓦輪ちゃんもかなり好きですが一番はこの納↑村不動さんが魅力的だということに尽きるんだよな。なお見始めたのは古武道が題材だったからなのですが、正直あまりその方面の興味を満たしてくれる作品ではなかったですね。そこは若干不満ではある。
では、part2に続きます。